『誰も知らない』

監督・脚本・編集・プロデュース:是枝裕和
カンヌ国際映画祭で主演の柳楽優弥(14)が最優秀男優賞を受賞


「学校に行かなくても偉くなった人はいっぱいいるでしょ」
学校は、国語、算数、理科、社会だけじゃなく、多くの第三者と共に時間を過ごすことで、
協調性、価値感、道徳、競争、自己管理など、勉強や遊びを通して社会生活の基礎となることを学ぶ場所だ・・と今更ながらに思う。
僕は大して物事を考えることなんかせずに、”あとでなんとかなる”と思いながら、
宿題なんかそっちのけで遊びに遊んでいた。
おかげで”自己管理”が苦手な大人になった。


残り数千円・・ノートに貼り付けたレシートを元に、日々の出費を計算する。
冷蔵庫に残っているモノをチェックして、買い物に行って、4人分のご飯を作り、弟や妹たちの面倒を見る。
公園に水を汲みに行き、ベランダの草に水をやり、洗濯をする。
限りなく静かでミニマルな生活の中、彼らは、ベランダでスクスクと伸びる草の様に、確実に生きていた。


僕はこの映画で、ちっとも泣けなかった。
事実、この映画の中で涙を流していたのは、子供を置いてどっかへ去ったオカアサンだけである。
オカアサンが帰って来ないという事実を知った瞬間も、冷たくなった妹をトランクに詰めて空港に埋めた場面も、彼らの頬には一筋の涙も流れていなかった。
”生き抜く”というギリギリの状況化において、泣いたって何も変わらない。彼らの強い眼差しは、そう訴えかけている様だった。


淡々と、過ぎていく日々。
その中で、僕は何か大切なことを見失っていることに気付いた。
あぁ、悲しいことに、僕は子供の頃の僕のままであった!