Movietone『The Blossom filled Streets』


Movietone /『The Blossom filled Streets』('00) / Post Rock, Folk


“Movietone”と聞いて、なんとなくThe Cinematic Orchestraを思い出してしまったので、比較してみる。
どちらもイギリス出身のバンドで、感動的な音世界を作り出すところに共通点はあるが、音的には全く逆だ。
The Cinematic Orchestraは一番新しいアルバム『Ma Fleur』の中で、ピアノやホーン、ストリングを多用し、
かっちり定まった枠の中で映画のワンシーンの様な分かり易い“美しい世界”を作り出し、
また最近リリースされたRoyal Albert Hallにて行われたライブでは、オーケストラを率いて素晴らしいショーを行った。


もう一方のMovietoneの音は、「ほとんど練習をしなかったの」と女性ヴォーカルのKate Wrightがこのアルバムについてのインタビューで語るほど、
メンバー同士の“呼吸”で成り立っている感がある。しかし彼らの長いキャリアや、フォークやフリージャズ、ロックなどを消化したヴィジョン(or方向性)の一致により、
美しくも儚い、柔らかな音世界を紡ぎ出す事に成功している。
ブリストル出身の男女6人組。ギターやピアノの他、様々な弦楽器の静かな重なり合いによって進行していくかと思いきや、
5曲目『The Blossom Filled Streets』ではそれが加速し、シンバルのクラッシュと共に散って行ったりする。
ひたすらゆるく、読書の邪魔をしないどころか、微細で儚い音の粒が言霊を美しく彩る様な感覚まである。


もちろんThe Cinematic Orchestraの楽曲も良いが(彼らの目指すところはMovietoneとは違うベクトルなんですよねきっと)、
ストリングで静かにグイグイ盛り上げて行く、という展開にある種の“胡散臭さ”を感じてしまう人に、
このアルバムをオススメしたいです。