町に生きる、ということ


土曜日。
一週間のうちで唯一、町と共に生活出来る日。
何故なら平日は夕方6時で店が閉まり、日曜日は店が開いてないから。


まずは散歩がてら、旧市街のいつもの服屋に行く。
『今日は新しいのは何も入って無いのよー』と、
店長らしきオネエサンと話をしつつ、冬物の話をしてたら、
『そう、ミリタリーの良いコートがあったわよ』と、
チラシに地図を書いてくれて、その店までの道を教えてくれた。


再びテクテクと、路面電車の走る大通りに沿って歩き、
旧市街を外れた初めて踏み入れる別の地区に、その店はあった。
早速ミリタリーのコートを試着させてもらったのだが、
モノは最高だったけど残念ながらかなりデカかった。
『倉庫を探しておくから、来週また来てくれよ』
店員のオニイチャンにそう言われ、新天地を後にした。


帰りがてら、これまたいつものジャズのCD屋さんに寄る。
欲しかったCDが『来週入荷する』と言われていたのに、
平日はそこに行けなかったのもあり(昼休みに来たら、店も昼休みだったし)。
”この前言ってたCDを買いにきたよ”と店長のオジサンに言うと、
『もう無いかも知れないぞ、”来週入荷する”って言ったんだからな・・』
なんてイジワル言いながら、一枚残っていたお目当てのCDを見つけてくれた。
他にいくつかCDをピックアップして、レジに行くと、
『プレゼントだ』と言って、誰かのライブレコーディングのCD−Rを
袋の中に入れてくれた。


他人行儀だった僕とこの町は、ちょっとづつだけど、
コミュニケートし始めた様な気がする。
言葉、文化、そういう障壁の少し先に来れたことへの喜び。
町に生きる喜び。